モンゴル語の文字には、伝統的モンゴル文字と、現代で全般的に使われるキリル文字がありますが、実はモンゴル語の表記方法には非常に面白い歴史の逸話があることをご存知ですか?
モンゴル語には、遊牧国家としての生活、世界帝国を築いた野心、宗教と思想、近代国家としての選択が、文字という形で時代ごとに刻まれているのです。
本記事では、その始まりから、フビライ・ハンとパスパ文字の逸話、さらに国家の象徴となったソヨンボ、そして現代のキリル文字の使用状況までをわかりやすく解説します。
モンゴル語学習におすすめのLingアプリでは、現代使われている「キリル文字」を使用し、言語の全スキルをバランスよく学べるため、モンゴル語を初めて学ぶ日本人に最適です。Lingアプリの詳しい説明はこちらからどうぞ!
目次
モンゴル語の文字のはじまり:縦書きのモンゴル文字

モンゴル語の基本的な表記体系が、伝統的モンゴル文字(モンゴル・ビチグ)です。
この文字は13世紀頃に整備され、日本語も同じ縦書きですが、縦に上から下へ、行は左から右へという世界的にも珍しい書き方が特徴的です。
伝統的モンゴル文字の特徴
| 縦書きの表記(左から右へ行を進める) |
| アルファベット系の表音文字 |
| 同じ文字でも語中の位置で形が変わる |
| 流れるような、美しい書体 |
| 日本語に文法構造が似ている |
この文字は遊牧民の生活とも相性がよく、布や木、岩などにも書きやすい実用的な文字でした。
現在でもこの文字は、中国・内モンゴル自治区で公式に使われており、看板や教育、行政文書にも登場します。
世界帝国の野心:フビライ・ハンとパスパ文字

モンゴル帝国が、アジアから西方へと最大版図を築いた13世紀、皇帝 フビライ・ハン は深刻な問題に直面していました。
モンゴル語、中国語、チベット語、ペルシア語……
「言葉が違えば、命令も法律も正確に伝わらない」。
皇帝の大胆な発想:
「ならば、すべての言語を書ける“共通文字”を作ればいい。」
フビライ・ハンは、言語の違いによる混乱を解決するため、「すべての言語を表記できる共通文字」を作ろうと考えました。
この前代未聞の国家プロジェクトを託されたのが、チベット仏教の高僧パスパ でした。
こうして誕生したのが、パスパ文字(八思巴字)という表記方法ですが、現在は廃止、使われていません。
パスパ文字の面白いポイント
パスパ文字は、チベット文字をベースにした表音文字で、モンゴル語と中国語(漢語)を「音」で書くことができました。
当時の碑文や硬貨には、漢字と並んでパスパ文字が刻まれているものもあり、「皇帝の権威を示す象徴的な文字」として使われていました。
しかし、なぜ広まらなかったのか?
- 学ぶのが難しかった
- 漢字文化がすでに強固だった
- 庶民にとって必要性が低かった
結果として、パスパ文字は政治的には重要でも、生活の文字にはならなかったのです。
フビライ・ハンの死後、元朝が滅ぶとともに、パスパ文字も歴史の表舞台から姿を消しました。
宗教と思想の文字:ソヨンボの誕生

17世紀、モンゴルではまったく異なる目的で、新たな文字体系が生まれます。
それが ソヨンボ(Soyombo)文字です。
誰が作ったのか?
ソヨンボ文字を考案したのは、ザナバザル(1635–1723)。
彼はモンゴル初代活仏であり、宗教指導者・芸術家・思想家でもありました。
ソヨンボ文字の目的
- 仏教経典を正確に書き写す
- モンゴル語・サンスクリット語・チベット語を表記
構造は非常に複雑で、日常文字としては普及しませんでしたが、精神性と思想を重視した「聖なる文字」として重要な役割を果たしました。
現在一般的には廃止・使われていません。
ソヨンボはシンボルとして残る
現在、私たちが目にするソヨンボは、文字体系の一部を抽象化した記号として残っています。
モンゴル国旗の左側に描かれているあのマークこそ、ソヨンボです。
上から下へ込められた意味
| 炎:過去・現在・未来の繁栄 |
| 太陽と月:永遠と再生 |
| 三角と四角:防御と安定 |
| 陰陽:調和と男女 |
つまりソヨンボは、国家・宇宙・人間観を全般的に一体化した思想のシンボルなのです。
近代の転換点:キリル文字の導入

モンゴル国(現在のモンゴル)はソ連の影響を受け、1942年にキリル文字(ロシア語系アルファベット)を採用します。
キリル文字の特徴
| 書き方&読み方:横 |
| 発音:綴りとの対応が比較的わかりやすい |
| 識字率向上に大きく貢献 |
現在、モンゴル国の日常生活・教育・メディア・SNS・事務全般・キーボードのほぼすべてがキリル文字です。
伝統的モンゴル文字
実は、モンゴルに住む多くの人々は伝統的モンゴル文字が読めないのが実情です。
内モンゴル自治区(中国)では学校教育や看板・公式文書で使用していましたが、2020年以降、中国政府による教育政策の変更が進められ、モンゴル語による授業時間や科目が大幅に削減される方向にあります。2020年の改革では、歴史・政治・道徳など主要教科の授業言語をモンゴル語から中国語(標準中国語=北京語)に切り替える方針が発表され、これに対する大規模な抗議運動が起きました。
現代のモンゴル語文字の使用状況一覧
| 地域 | 主に使われている文字 |
|---|---|
| モンゴル国 | キリル文字 |
| 中国・内モンゴル自治区 | 伝統的モンゴル文字 |
| 宗教・象徴 | ソヨンボ |
| 歴史研究 | パスパ文字 |
近年は、伝統文字復興の動きもあります。また、専門の学術誌や学会などでは、パスパ文字やソヨンボが使われることもあります。
モンゴル語教育は縮小傾向にありますが、一方で、地域や学校・家庭でのモンゴル語使用は依然として大切な文化要素として残っています。
モンゴル語と日本語の比較|日本人にとって学びやすい?
一見するとまったく異なる言語に見えるモンゴル語と日本語ですが、実は発音や文法構造で共通点があるんです。
発音
どちらも母音がはっきりしている言語で、日本語は「あ・い・う・え・お」の5母音、モンゴル語はそれに加えて「ö(オェ)」「ü(ウュ)」などがありますが、子音が極端に連続しにくく、音節が明瞭という点は共通しています。そのため、日本人にとってモンゴル語の発音は比較的聞き取りやすいと感じられます。
語順
モンゴル語も日本語と同じ語順:基本的にSOV(主語+目的語+動詞)で、基本の文法が規則的です。日本人にとって比較的取り組みやすい言語ではないでしょうか。
モンゴル文字関連のQ&A
モンゴル語には文字がいくつあるのですか?
モンゴル語には、時代や用途によって複数の文字体系がありますが、代表的なのは、縦書きの伝統的モンゴル文字、元の時代に使われたパスパ文字、宗教・象徴的な意味を持つソヨンボ文字、そして現代モンゴル国で使われているキリル文字です。
現在の日常生活や教育ではキリル文字が主流です。
モンゴル語を学ぶなら、どの文字から始めるべきですか?
キリル文字から学ぶのがおすすめです。現代モンゴル国の学校、メディア、SNSで使われており、教材や音声資料も豊富です。発音と綴りの関係が比較的わかりやすく、日本人学習者にも取り組みやすいのが特徴です。
モンゴル文字は今後も残っていくのでしょうか?
モンゴル文字は形を変えながらも、今後も残っていくと考えられています。モンゴルではキリル文字が主流ですが、伝統的モンゴル文字の復興や再教育も進められています。
また、ソヨンボは国旗や国章に使われ、国家の象徴として強く意識されています。実用文字・文化文字・象徴的文字が共存している点は、モンゴル語の大きな特徴であり、今後も重要な文化遺産として受け継がれていくでしょう。
Lingアプリでモンゴル語を楽しく学ぼう!
モンゴル語に興味を持ったら、まずは楽しく続けることが大事ですよね。
Lingアプリでは、現代モンゴルで使われているキリル文字のモンゴル語を基礎から学べます。
文字と発音をセットで確認でき、ネイティブ音声を聞きながら練習でき、楽しいコンテンツが満載です。
歴史や文字を知った今こそ、この貴重なモンゴル語の世界に飛び込んでみては!
Lingアプリの詳しい機能については、是非こちらの記事をチェックしてみてください。
是非この機会に、今すぐGoogle Play StoreもしくはApple App StoreからLingアプリを無料ダウンロード!
